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 高知エコデザイン宣言


 レイチェル.カーソン博士が「沈黙の春」で地球環境に警鐘を鳴らして約
40年、ローマクラブが地球資源の限界を悲観的に語って約30年が経ちま
した。この間、私たち人類は利便性や快適さを求めるあまり、彼らの警告に
耳を貸さず、事の重大さから目を背け、大量生産、大量消費、大量廃棄の持
続不可能な社会を営々と築いてきました。そして90年代、私たちの行動が
「人類史上初めて、将来の世代が地球上で生きていけるのかどうかに影響を
与えている」(ワールドウォッチ研究所「地球白書1999〜2000」)
というほどに切羽詰まった情況にあることに気づき始め、やっと本気で地球
環境問題が語られるようになりました。「環境破壊」の世紀から、「環境保
全」の世紀へ。私たちの世代は、持続可能な社会を実現するために、パラダ
イムを大きく転換しなければならない重責を負うことになったのです。

 とはいえ私たちは、環境保全のために経済活動を極端に減退させ、すでに
獲得した豊かさや利便性を捨てられるのでしょうか? これは現実的には無
理な注文でしょう。いま求められているのは、これまで相反する概念とされ
た経済と環境を両立させること、つまり、資源エネルギー消費と環境への負
荷を徹底的に減らしながら、尚かつ一定の経済成長を実現するということな
のです。そしてこの難題を解決するための手法、概念がエコデザインです。
エコデザインとは、原材料の採取から生産、使用、リサイクル、最終処分の
ライフサイクルのすべての段階で環境効率を飛躍的に高めようとする設計.
生産技術であり、エコデザインによる技術革新は、製造プロセスの改善、製
品の最適化.再設計、製品機能.社会システムの一新という段階を経て持続
可能社会の実現を目的とします。

 ここで重要となるのは、エコデザインされた製品やシステムやサービスが、
消費者、官庁、企業などから優先的にグリーン購入されることです。これに
より企業活動はエコロジーへの明確なインセンティブを持ち始め、環境対策
へのモチベーションを強力に高めます。すでにOECD諸国を中心に「環境」
をキーワードとした企業選別や格付けが始まり、グリーン購入のネットワー
クは急速な広がりを見せています。日本でも今年、循環型社会形成推進基本
法と5つの環境関連法が一気に成立し、これにより国内のグリーン市場も相
乗的に拡大することが予想されています。環境に配慮していない商品やサー
ビスはもはや市場競争力を持ち得ないという社会が、目の前に迫っているの
です。

 この大きな時代の節目に、全国に先がけて、四万十川に象徴されるような
豊かな自然の残ったわが高知県の企業、市民、行政、大学などが協力してエ
コデザインを推進しようではないか。これにより、循環型社会の新しいモデ
ルを創り出し、21世紀の地域のあり方を全国にアピールしようではないか。
地球環境保全に貢献できる技術やシステムを開発し、力を合わせて土佐の底
力を見せつけようではないか。そういう思いから、私たちは産学官民による
高知エコデザイン協議会を設立することを決意しました。

 これまでの高知は確かに、一周遅れの最終ランナーだったかもしれません。
しかしいまやエコロジー革命、IT革命などにより従来の価値体系は大きく
揺れ動き、社会変革の大波が押し寄せています。こういう変革期こそ、実は
私たち土佐人がもっとも力を発揮できる好機であり、高知エコデザイン協議
会こそがその魁(さきがけ)となれるのではないか。土佐人とエコデザイン
の力を強く信ずるがゆえに、私たちはそう確信しているのです。


                                      平成12年 9月18日
                                      高知エコデザイン協議会